ピエル・パオロ・パゾリーニ『奇跡の丘』は何についての映画だったのか

ピエル・パオロ・パゾリーニ監督による1964年作『奇跡の丘』について。キリストの誕生から復活までをネオレアリズモ、ドキュメンタリー的な方法で撮った映画。セリフは聖マタイのゴスペルからそのまま取ってきているらしく、それが原題 「The Gospel Accordi…

ピエル・パオロ・パゾリーニ『マンマ・ローマ』捻じ曲げられない運命

ピエル・パオロ・パゾリーニ監督による1962年作『マンマ・ローマ』について。おそらく戦争孤児であり娼婦として生きていくしかなかったマンマ・ローマが、息子であるエットレを自分とは違う階級へ抜け出させようとする。そのために、娼婦の仲間と協力して息…

ピエル・パオロ・パゾリーニ『アッカトーネ』予め定められた役割

ピエル・パオロ・パゾリーニ監督による1961年作『アッカトーネ』について。タイトルにもなっているアッカトーネはピンプであり、愛人を売春婦にすることで働かずに収入を得ている。アッカトーネのような人々にとって、働くとすれば重労働しか選択肢がなく、…

野原位『三度目の、正直』日常 / 行間に潜むもの

野原位監督による2022年作『三度目の、正直』について。役割、自分自身で内在化した理想像による日常的な抑圧についての映画のように感じる。 その役割を他者に押し付ける心理の根源には子供や妻に対する「自分のものだ」という所有の感覚がある。主人公はそ…

アニエス・ヴァルダ『カンフー・マスター!』再生産される社会・関係性

アニエス・ヴァルダ監督による1987年作『カンフー・マスター!』について。40代の女性であるマリーと、その子供の友達である10代の少年であるジュリアンという、恋愛の時期が終わりつつある人とそれが始まりつつある人の間の恋愛を軸とした映画となっている。

アニエス・ヴァルダ『落穂広い』拾い合う落穂

アニエス・ヴァルダによる2000年作『落穂広い』について。「落穂拾い」とは収穫されずに残った食べ物を拾う人を指す言葉であり、この映画では「落穂拾い」を捨てられたもの、使われないもの、つまり社会的に有用でない、価値のないものを拾う人々として、ア…

アニエス・ヴァルダ『冬の旅』空洞の街

アニエス・ヴァルダによる1985年作『冬の旅』について。夏の間はヴァカンスで賑わう街が舞台となっているが、季節は冬である。ヴァカンス地で冬も暮らしている人々は逃避先がない、つまり同じ場所で同じ生活を続けるしかない人々である。そのような街の人々…

シャンタル・アケルマン『私、君、彼、彼女』における君=彼について

シャンタル・アケルマン監督による1974年作『私、君、彼、彼女』について。3パートに分かれた映画。1パート目の最後で、主人公がレッドライトストリート(ヨーロッパの風俗街)のような一面がガラス張りになった1階の部屋にいたことがわかる。段々と裸になる時…

シャンタル・アケルマン『囚われの女』解体されるハードボイルド

シャンタル・アケルマン監督による2000年作『囚われの女』について。主人公は愛しているなら嘘をつかないはずという前提を持っていて、それに対して彼女は互いに知らない部分を残すからこそ愛することができると考えている。彼女の言動の不一致が彼女は自分…

ポール・トーマス・アンダーソン『リコリス・ピザ』直線的な移動が象徴するもの

ポール・トーマス・アンダーソン監督による2021年作『リコリス・ピザ』について。広告が主軸としておかれており、この映画で描かれるアメリカにおいては芸能人や商品のPRとして自己増殖していく擬似イベントが根付き切っている。理想がイメージに置き換えら…

エリック・ロメール『シュザンヌの生き方』日常における支配

エリック・ロメール監督による1963年作『シュザンヌの生き方』について。パッとしない主人公がおり、その親友は主人公を自分より下の存在として見下し利用している。しかし、主人公はそれを認めない。利用されているという事実を自分自身からも隠蔽している…

エリック・ロメール『モンソーのパン屋の女の子』決定論と自由意志

エリック・ロメール監督による1963年作『モンソーのパン屋の女の子』について。主人公はルーティンを持っていて、その中でいつもすれ違う女性に対して執着している。その女性が急に現れなくなったことで、その女性を探すための新しいルーティンを作り出す。…

エリック・ロメール『ベレニス』無意識に乗っ取られる理性

エリック・ロメール監督による1954年作『ベレニス』について。変化のない屋敷に壮年期まで住み続けたことで、夢想することによってその屋敷から幻想へと逃避する主人公。その逃避は、屋敷の何かについて偏執的に分析(瞑想)することによって行われる。

『トップガン マーヴェリック』トム・クルーズによる映画製作の継承

ジョセフ・コシンスキー監督による2022年作『トップガン マーヴェリック』について。マーヴェリック=トム・クルーズとしてトップガンに絡む過去の関係性を清算しつつも自身の映画製作を次世代へと継承していく映画となっている。

『ソー:ラブ&サンダー』ヴァイキングと国家 / アイデンティティの再獲得 / 続編に向けて

『ソー:ラブ&サンダー』は何を語ろうとしていたのか。神と人間、そしてローマの神とヴァイキングの神という対比、そしてソー及びアスガルドのアイデンティティの再獲得を軸に、続編がどういう話になるかを含めて書いています。