2023-03-08から1日間の記事一覧

消費される魔法の終焉 / なぜフラハティか ー オタール・イオセリアーニ『そして光ありき』

オタール・イオセリアーニ(Otar Iosseliani)監督による1989年作『そして光ありき(Et la lumière fut)』について。 あらすじ おそらくイオセリアーニが作り上げたものであろう集落があり、そこでは雨乞いをすれば豪雨が訪れ、切り落とされた首を繋げれば…

一つ目の断片は何か ー オタール・イオセリアーニ『ある映画作家の手紙。白黒映画のための七つの断片』

オタール・イオセリアーニ(Otar Iosseliani)監督による1982年作『ある映画作家の手紙。白黒映画のための七つの断片(Lettre d'un cineaste - Sept pieces pour cinema noir et blanc)』について。 一つ目の断片は何か パリの都市生活を映した映像に『四月…

オタール・イオセリアーニ『トスカーナの小さな修道院』

オタール・イオセリアーニ(Otar Iosseliani)監督による1988年作『トスカーナの小さな修道院(Un petit monastère en Toscane)』について。 トスカーナの外れに修道院があり、5人の修道士がおそらく古くから伝承されてきただろう宗教儀式を毎日繰り返し、…

歴史と亡霊、レンブラントの光 ー オタール・イオセリアーニ『蝶採り』

オタール・イオセリアーニ(Otar Iosseliani)監督による1992年作『蝶採り(La Chasse aux papillons)』について。 歴史と亡霊、レンブラントの光 フランスの古城、所有者といとこを中心にマハラジャ、べん髪のベジタリアン集団、飲んだくれの神父など様々…

共存から内戦へ / 独裁者と信仰 ー オタール・イオセリアーニ『唯一、ゲオルギア』

オタール・イオセリアーニ(Otar Iosseliani)監督による1994年作『唯一、ゲオルギア(Seule, Georgie)』について。 共存から内戦へ かつて複数の民族、宗教が共存していたジョージアがなぜ内戦へと至ったのかという問いが冒頭におかれ、紀元前からこの映画…

1921年4月、ソ連占領下のジョージア ー オタール・イオセリアーニ『四月』

オタール・イオセリアーニ(Otar Iosseliani)監督による1962年作『四月(Aprili)』について。 ソ連のジョージア侵攻が1921年の2月15日から3月17日らしいので、タイトルはソ連の占領下となった1921年の4月を指しているんだろうと思う。 ジョージアの家が、…

道路を割る花 / ポリフォニー ー オタール・イオセリアーニ『珍しい花の歌』

オタール・イオセリアーニ(Otar Iosseliani)監督による1959年作の短編『珍しい花の歌(Sapovnela)』について。 ジョージアの山岳風景が映される。そこに咲いていた花が「珍しい花」という商品として温室で人工的に育てられている。温室で育てられた花が、…

幸福への適合 ー オタール・イオセリアーニ『水彩画』

オタール・イオセリアーニ(Otar Iosseliani)監督による1958年作の短編『水彩画(Akvarel)』について。 労働と家事に明け暮れる妻、飲んだくれる夫。疲弊した家庭を追い詰めるように鳴り響くスピーカー。妻の金を盗んで逃げた夫はギャラリーに辿り着く。夫…

ジョルジュ・フランジュ『殺人者にスポットライト』における真の殺人者は誰か

ジョルジュ・フランジュ(Georges Franju)による1961年作『殺人者にスポットライト(Pleins Feux sur l'Assassin)』について。 死期を迎えた古城に孤独に暮らす伯爵は、オルゴール付きの人形と共に鏡の裏に隠された部屋に入って死ぬ。鏡の裏の部屋の存在は…

信じられてしまった虚構 ー サッシャ・ギトリ『毒薬/我慢ならない女』

サッシャ・ギトリ(Sacha Guitry)による1951年作『毒薬/我慢ならない女(La Poison)』について。 スタッフロールの代わりにサッシャ・ギトリが全員の名前を呼びながら俳優やスタッフに感謝してる映像が冒頭に差し込まれており、それによってこれが作られ…

信仰 / 騎士道としての白 ー ジャン・グレミヨン『白い足』

ジャン・グレミヨン(Jean Grémillon)による1949年作『白い足(Pattes blanches)』について。 ブレッソンのキャリア初期と同じ時期にカール・TH・ドライヤーやこの監督の後期の映画があるということにすごく納得感がある。冒頭の空に左下にさがるように広…

二つの戦前 / 演じること ー ジャン・グレミヨン『不思議なヴィクトル氏』

ジャン・グレミヨン(Jean Grémillon)による1938年作『不思議なヴィクトル氏(L'étrange Monsieur Victor)』について。 ヴィクトルがコメディアンととして登場するが、画面は何かぼやけて閉塞感に満ちている。そこに、殺人のニュースと明らかに異様な雰囲…

戦場と生 ー ジャン・グレミヨン『曳き船』

ジャン・グレミヨン(Jean Grémillon)による1941年作『曳き船(REMORQUES)』について。 幸福に満ちた船員の結婚式を映すカメラは、ぐるぐると忙しなく回るように移動し続ける。カットも不安定に切り替わり続ける。カメラの移動はなぜか上下に弧を描くよう…

運命への報われない抗い ー マックス・オフュルス『永遠のガビー』

マックス・オフュルス(Max Ophüls)による1934年作『永遠のガビー(Everybody's Woman)』について。 『魅せられて』『忘れじの面影』に共通する、どこにもいけない人物とどこにでもいける人物という対比がこの映画にも存在しており、今回は父親によって家…