アピチャッポン・ウィーラセタクン『Blue』 焚き火によって現出する存在


アピチャッポン・ウィーラセタクン監督の2018年の短編『Blue』について。

焚き火によって現出する存在

森の中に寝ている女性に焚き火がオーバーラップする。同じ場所にスクリーンがあって2つの時代の同じ場所が描かれている。そのスクリーンにも焚き火がオーバーラップする。そして焚き火がガラスを貼った枠に反射させることでそのオーバーラップが撮られていること、女の人に焚き火を映すためのもう二つ目のガラス枠があることがわかる。

スクリーン、ガラス枠、焚き火、二つ目のガラス枠、女の人という位置関係になっている。焚き火によってスクリーンに映る二つの過去と女の人が繋がるような感覚がある。

森の中にベッドがある非現実さに加えて、カメラは焚き火の位置にあり、女の人もスクリーンもガラスの枠越しに映される。それによって、カメラがある世界に存在しているものは焚き火だけで、スクリーンと女の人は別の世界にあるように見える。焚き火によってガラス枠越しに別の世界が現出し、重ね合わされ接続される。

感想 / レビュー / その他

アピチャッポン・ウィーラセタクン監督の無意識と意識だったり土地や人の記憶にあるもの、今あっただろうものと今あるものを同時に存在させるようなノスタルジックでも痛切でもあるような感覚が好きで、この短編もかなり引き込まれた。

作品リンク

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