クシシュトフ・キェシロフスキ『トーキング・ヘッズ』社会 / 人生の普遍的なスナップショット

クシシュトフ・キェシロフスキ監督による1979年の短編『トーキング・ヘッズ』について。

社会 / 人生の普遍的なスナップショット

1980年という同じ年に、同じポーランドで1歳から100歳の異なる年齢の人々に対して、「あなたは誰ですか?」「あなたは人生に何を望みますか?」という同じ質問を投げかけ、その返答を撮ったものがその年齢が低い順に並べられたドキュメンタリー。

その人の年齢ではなくその人の生まれた年が表示され、その人が自分をどういう人かと思っているのかが明らかにされることで、インタビューされた人自身のスナップショットとして個別の人生を感じさせる。一方で、それが年齢順に並べられることで一人の人間が生まれて老いていくまでの普遍的な成長過程にも見える。

そして、1980年のポーランドのスナップショットとして、その人々の解答から当時の政治、社会背景が浮かび上がってくる。同時に、何人もの同じ質問への答えが繋げられることによって、そのあらゆる背景を持つあらゆる人に普遍的なもの、人間としての普遍性のようなものも浮かび上がってくる。

この個別性と普遍性が同時にある感覚は同じ監督の短編で同じような設定の『異なる年齢の7人の女性』と共通する。しかし、『異なる年齢の7人の女性』では1週間に年齢順に7人の人生が映され、それが円環構造となり次の週にもまた同じことが永遠に繰り返されていくような感覚があるのに対して、この短編はその円環構造がない。

それによって、人間の生の一回性を感じられると同時に、1980年という年が確実に終わっていくことを感じられる。だからこそ、100歳の女性の「あなたは人生に何を望みますか?」への「長生きしたい」という返答が感動的であると共に、ここで捉えられた時代が終わっていき、その先にはより良いものが待っているような希望的な感覚を覚える。

実際にポーランドで民主化が実現するのは10年近く先だが、民主化を実現した組織である「連帯」が結成されたのはこの短編が作られたのと同じ1980年となっている。

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上記の通り、この短編とほとんど同じ構造を持った映画。こちらでは人に焦点が絞られており、社会が浮かび上がる感覚、当時のポーランドのスナップショットのような感覚はない。人生の刹那的かつ永遠的な感覚が中心となっている。

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同じ監督が一人の男を通して当時のポーランドにおける全体主義的な政治を捉えた短編。

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https://mubi.com/films/talking-heads