モノクロの過去 ー オタール・イオセリアーニ『エウスカディ、1982年夏』


オタール・イオセリアーニ(Otar Iosseliani)監督による1983年作『エウスカディ、1982年夏(Euzkadi été 1982)』について。

冒頭、バスク地方の言語がヨーロッパ最古の言語であること、住む人々が言語、伝統を維持し続けていることが語られる。前半はモノクロでバスク地方でのある一日が映される。トラクターなどが導入されつつも非常に伝統的な生活を続けているように見える。しかし、後半唯一の字幕付きのセリフとしてバスク地方の伝統や文化を次の世代に伝承することすら難しいこと、伝承のためにまず文化を愛してもらうこと、そしてその味を知ってもらうことが大切であると語られる。そして、カラーに切り替わる。後半は祭りの様子が映される。前半で日常生活のように描かれていた伝統的な生活の多くが、外部に向けた祭りのための準備だったこと、モノクロで映されていた生活が既に過去のものとなっていることが明らかになる。祭り終わりの喜びの声に、鳥や山岳の映像が不吉な雰囲気をもって重ねられる。そして、過去のものとして、モノクロの歌唱のショットが差し込まれて終わる。『トスカーナの修道院』と同様に、バスク地方にソ連の占領によって伝統が失われてしまったジョージアの姿が重ね合わされているように感じる。