直視される観客 ー オタール・イオセリアーニ『ジョージアの古い歌』


オタール・イオセリアーニ(Otar Iosseliani)監督による1969年作『ジョージアの古い歌(Dzveli qartuli simgera)』について。

ジョージアの4つの地域での伝統的な多声合唱を記録し、紹介するという立て付けの短編。各地域の多声合唱を背景に、それぞれの地形や他の伝統を映像で見せていくというものとなっている。多声合唱はイオセリアーニの映画で共存のモチーフとして現れるものとなっている。『唯一、ゲオルギア』では共存を可能としてきたのは積み重ねられた伝統や文化であること、ソ連占領下でのシステムの強制によってそれらが破壊されてしまったことが語られる。そのため、地域の伝統、多声合唱は破壊されずに残ったもの、そして今後失われるものとして収められているのだろうと思う。

地域の人々が家などを背景として、動かずに睨むようにカメラを直視するショットが何度も挟まれる。それは、地域の人々の暮らしや服装を記録するという目的の元撮られたもので、カメラに慣れない被写体を映したためこのような表情となったと解釈できるが、そうではなく、このショットこそがこの短編のメッセージなのだろう。