上演され続ける傷の記憶 ー アラン・レネ『メロ』

アラン・レネ(alain resnais)による1986年作『メロ(melo)』について。 夫婦であるピエールとロメーヌの元にマルセルが訪れる。マルセルは有名なヴァイオリン演奏家で、同じくヴァイオリン演奏家であるピエールとは若い頃からの親友である。マルセルは二…

性愛の原風景、規範の確立 ー ピエル・パオロ・パゾリーニ『アラビアン・ナイト』

生の三部作最終作として『デカメロン』『カンタベリー物語』に続く作品。これら前二作がイタリア、イギリスと舞台を変えつつも原作の書かれた時代、同じ14世紀を描いたものだったのに対して、この『アラビアン・ナイト』はその数世紀前が舞台となっている。…

苛烈化する支配、フィクションによる復讐 ー ピエル・パオロ・パゾリーニ『カンタベリー物語』

ジェフリー・チョーサー『カンタベリー物語』をベースとした映画で、『デカメロン』に続く生の三部作二作目。 イギリス、カンタベリー大聖堂へ向かう巡礼旅行、旅行を楽しむために参加者達が語った話を、そこに居合わせたパゾリーニ演じるジェフリー・チョー…

性愛の抑圧、フィクションによる解放 ー ピエル・パオロ・パゾリーニ『デカメロン』

ボッカチオ『デカメロン』を下敷きにした生の三部作一作目。 時代は原作と変わらず14世紀のまま、舞台はナポリに変更されている。ナポリは『愛の集会』で描かれたように、貧困層が多くを占めイタリア・カトリック社会によって搾取されてきた土地だ。『愛の集…

フレームの外へ向かう運動 / 内からの祈り ー 山崎樹一郎『やまぶき』

冒頭、黒い画面にやまぶきの花が咲くように描かれる。その絵に重なるように山が映されるが、その山は開発されやまぶきは枯れている。劇中語られる通り、やまぶきは田舎にしか咲いていないような日陰でしか育たない花であり、一面砂と石の広がる、日光を遮る…

アメリカ文化、工業化とイタリア社会『イタリア式奇想曲』

工業化が進み、イギリスを経由してアメリカ文化が若者を中心に受容された当時のイタリア社会についてのオムニバス。原題は「わがままなイタリア資質」みたいな意味になるんだろうか。パゾリーニの短編が非常に真っ直ぐに美しく、またトトの最後の出演作でも…

五月革命、そして愛の終わりについてのオムニバス『愛と怒り』

五月革命、そして愛の終わりについてのオムニバス。最後に置かれたマルコ・ベロッキオの作品が直接的に五月革命渦中についてであり、その前のゴダールの作品が五月革命もしくは愛の終わる瞬間について、ベルトリッチがより大きく愛のある世界の終わりについ…

ゴダール、パゾリーニ、ロッセリーニ、そしてオーソン・ウェルズと世界の終わり『ロゴパグ』

1963年作、世界の終わりについてのオムニバス映画『ロゴパグ(Ro.Go.Pa.G)』。物、機械として非人間化されていく人々という主題で共通し、扱われるテーマは精神分析、労働、核兵器、消費。ゴダールとグレゴッティの作品がシンプルで一つの問題意識に絞られ…

イタリア社会に関するオムニバス『華やかな魔女たち』において現代の魔女たちはどのように描かれたか

中編の間に短編を挟み込んだ5話構成のオムニバス映画。全ての作品でシルヴァーナ・マンガーノが魔女として現れるが、魔女をどう解釈するかは作品によって違っている。おそらく魔法=アメリカとして、現代生活に適応した新しい女性像が魔女として置かれている…

カトリック社会による規範、その抑圧 ー ピエール・パオロ・パゾリーニ『愛の集会』

ピエール・パオロ・パゾリーニ(Pier Paolo Pasolini)監督による1965年作『愛の集会(Love Meetings)』について。 この映画が公開された1965年時点、イタリアでは離婚が法的に認められておらず(制約の元認められるのが1970年)、1958年のメルリン法によって…

映画によって捉えられた虚構の死 ー ダニエル・シュミット『書かれた顔』

ダニエル・シュミット(Daniel Schmid)による1995年作『書かれた顔(The Written Face)』について。 坂東玉三郎が歌舞伎の舞台裏へと入っていく、その舞台で演じている人物もまた玉三郎である。ここから舞台を終えた玉三郎の白塗りが落とされるまで、この…

カルポ・ゴディナ『アイ・ミス・ソニア・へニー』監督達はどのようにソニア・へニーを撮ったか

カルポ・ゴディナ(Karpo Acimovic-Godina)監督による『アイ・ミス・ソニア・へニー(I miss Sonja Henie)』(1971年 ユーゴスラビア) について。 カルポ・ゴディナが何人かのディレクターに「I miss Sonja Henie」というフレーズを含んでいる短編を、全員共通…

まなざしについての物語『シー・ハルク:ザ・アトーニー』を読み解く / MCUはマルチバース・サーガで何を物語ろうとしているのか

MCU

※ 『シー・ハルク:ザ・アトーニー』『ロキ』のネタバレを含みます 舞台設定 視線の変容 ハッピーエンド / クライマックス カーン=KEVIN 関連記事 舞台設定 冒頭、初めての最終弁論を控えたジェニファー・ウォルターズ(ジェニファー)は「楽しい法廷ドラマ…

生き物としての都市 ー キロ・ルッソ『大いなる運動』

キロ・ルッソによる2021年作『大いなる運動』について。 あらすじ 標高3,600メートルに位置するボリビアの首都ラパス。1週間をかけてこの街にやって来た若い鉱山夫が謎の病に冒される。薬草や呪いで青年を癒そうとする医者たち。青年の悪夢は都市と混濁し、…

川端康成『雪国』を映画を軸に読み直す

冒頭、語り手である島村の見る暗いトンネルの先に開けた一面の雪景色の輝くような白さは、暗闇から映画が映し出され、スクリーンが白く光る様と重なる。そしてその列車で、島村は窓から見えるともし火と窓に反射した葉子を映画の二重露光のように重ねて見る。…