1921年4月、ソ連占領下のジョージア ー オタール・イオセリアーニ『四月』


オタール・イオセリアーニ(Otar Iosseliani)監督による1962年作『四月(Aprili)』について。

ソ連のジョージア侵攻が1921年の2月15日から3月17日らしいので、タイトルはソ連の占領下となった1921年の4月を指しているんだろうと思う。

ジョージアの家が、ソ連の作業員によって作り替えられていく。新しい家が建ち、そこに家具が運び込まれていく。その作業音は不快な音として響き、主人公男女の足音は美しい演奏のように響く。それら作業音はジョージアの人々の演奏や発する音を中断させる。主人公男女は作業員達によって阻まれ続けるが、残ったジョージアの木の元で遂に結ばれる。しかし、その木もまた家具の製造のために切り倒される。

二人は新しく作られたマンションで生活を始める。二人が近づくと、電球や水道、ガスがあたかも生き物であるように、自然の一部のように活力を帯びる。水道は蛇口を捻るのではなく、女に撫でられることによって水を出すが、これは性的な意味での検閲を避けるための比喩なのかもしれない。二人が結ばれることによって、向かいのマンションでジョージアの音楽が演奏され始める。その演奏によってマンションの個室によって分たれていた人々が、開いた窓を通して繋げられる。

しかし、そのマンションにはソ連の作業員がおり、近代的な生活を送っているかを鍵穴から監視している。作業員は空っぽの家に住んでいた二人に、家具を提供する。家具は、ジョージアの木の対比となっており、ソ連に強制された生活様式を象徴する。それをきっかけに二人は段々とその生活へと染まっていく。二人の出す音が、作業員と同じ不快な音へと変わっていく。それを反映するように、人々を繋げていた音楽も演奏されなくなり、窓は閉じられそれぞれが部屋に籠るようになる。そして、二人の関係性も崩れていく。 かつて住んでいた家の写真を見ることによって、その生活が拒絶される。家具が抵抗のように窓から投げ出される。そして、二人は木のあった丘に再び向かう。切り倒された木の元、二人が結ばれた時のショットが反復される。

『珍しい花の歌』と非常に似た主題を持つ作品。切り倒された木の元での反復は、『珍しい花の歌』での道路の下から草が生えて民謡を再び歌い出すシーンと対応している。反抗として家具が投げ出されるシーンの力強さに感動する。