オタール・イオセリアーニ(Otar Iosseliani)監督による1959年作の短編『珍しい花の歌(Sapovnela)』について。
ジョージアの山岳風景が映される。そこに咲いていた花が「珍しい花」という商品として温室で人工的に育てられている。温室で育てられた花が、おそらくジョージアのものではない音楽に合わせて踊るように映される。それは踊っているというより踊らされているように見える。それと対比するように、それら花を守るように自然の中で育てる男の姿が映される。その花は伝統的な刺繍模様と重ねられる。夜、不吉な予感と共に男が花と共にうめく姿が映る。そして昼、ジョージアで自生する花がおそらくジョージアの民謡を歌い始める。それは様々な種類の花の様々な歌声が重なったものなっている。しかし、それら花が重機によって暴力的に掘り起こされ、歌は中断する。抵抗するように、作られた道路を割って草が生え、再び歌い出す。
ナレーションはソ連の検閲によって監督の意図に反してつけられたものであるため、翻訳はつけません。というような文章が冒頭に出てきた。暴力的にナレーションをつけられたという背景によって、この作品自体が道路を割って再び生えた草であるというメタ的な意味を持つようになっている。