幸福への適合 ー オタール・イオセリアーニ『水彩画』


オタール・イオセリアーニ(Otar Iosseliani)監督による1958年作の短編『水彩画(Akvarel)』について。

労働と家事に明け暮れる妻、飲んだくれる夫。疲弊した家庭を追い詰めるように鳴り響くスピーカー。妻の金を盗んで逃げた夫はギャラリーに辿り着く。夫を追うのは妻であり、ソ連によって強いられた近代的な生活でもある。ギャラリーに飾られた絵画、彫刻がその苦悩や叫びと共鳴し、夫を圧倒する。夫は段々と自分が追われていることを忘れ、作品に没入するようになる。そして水彩画に描かれた家が、自分達の家だと確信する。その水彩画は幸福な家庭を描いたものだと解説される。水彩画に描かれた家を見つめることで夫婦は段々と、自分達の家を幸福な家庭として認識し始める。状況は変わらないが、二人は強いられた生活を幸福なものとして捉えるようになる。二人を追い立てるようなスピーカーからの音は聞こえなくなる。それは二人が体制に適応したことを意味する。