『トップガン マーヴェリック』トム・クルーズによる映画製作の継承

ジョセフ・コシンスキー監督による2022年作『トップガン マーヴェリック』について。マーヴェリック=トム・クルーズとしてトップガンに絡む過去の関係性を清算しつつも自身の映画製作を次世代へと継承していく映画となっている。

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トム・クルーズ=マーヴェリック

戦闘機に乗ること=映画を作ること、主役であるマーヴェリック=プロデューサーであり役者であるトムクルーズとして、マーヴェリックについての映画でありトム・クルーズ自身についての映画になっている。

昇進を断り今でも現役のプレイヤーである主人公は今でも現役でアクションをしているトム・クルーズ自身のことであり、トム・クルーズに命令を下す上層部は映画業界の上層部と重ね合わされる。最新の無人戦闘機に対して、時代遅れの有人戦闘機があり、無人飛行機の最大の利点は命令通りに動くこと、人のように反抗しないことが挙げられる。「君たちはいつか時代遅れになる」という上層部のセリフに対する「でも今日じゃない」と宣言して、その意向に反抗しながら時代に逆行していく。

次世代への継承

トップガンの新しい世代の若者たちは、トップガンに熱狂していた世代の子供世代、両親を通してトップガンに熱狂するようになった世代としておかれている。実際の製作年と一致しない30年という時間差はそれに応じたものなんだろうと思うし、バーのシーンではその若者たちが両親の世代の音楽が好きであることが示される。なんならジョックス的な男を演じている役者はトップガンを見て役者になることを決めたらしい。

マーヴェリックがその後続の世代に対して行うのは、不可能を可能にする姿を見せることで、現役としてそれらの人々をリードすることである。それが、おそらく相当難しかっただろうこの映画の製作を行うこと、そして現役で不可能なアクションを行うことと重ね合わされ、トムクルーズがどのようにして自身のアナログな映画製作を継承しようとしているかについて表したものになっている。

新しい世代の一人であるルースターにマーヴェリックがかける、「考えるな、感覚に従え」というセリフはトムクルーズがその後続として自認しているだろうブルースリーのセリフの引用であると共に、若い世代に自身の映画の見方を伝えるようなものとなっている。

また、マーヴェリックが新しい世代にバトンを渡す話であると同時に、前作での関係性を清算していく話にもなっている。それが更に前作の監督や役者へのメタ的な言及へと及んでいく。

感想 / レビュー

マーヴェリック=トムクルーズとして、実際に不可能そうかつ明確に時代に沿わない映画が目の前に展開していくのが最高なところなんだろうと思う。評判の良さ的にトップガンを知らない人でも楽しめる感じの映画だと思って見に行ったらかなりハイコンテクストな映画だった。個人的には前作にもトムクルーズにも映画というフォーマットにもアナログであることにもそこまで思い入れがないので少し距離があった。

また、アナログだからこそできる映像的な工夫をするというよりは、アナログで撮ったものをそのまま見せるという形なので、異様な実在感がある一方で映像的にはあまり工夫がないというか、ミッションインポッシブルの近作で見たなって感じの映像が続くように感じた。

制限時間の間に山の間をすり抜けながら直線的に進んで的に当てて、そして一気に飛翔して敵をすり抜けて戻るというシンプルなミッション設定があって、それを何度も繰り返し練習して、本番があってその後さらに一捻りした展開があるというメインの筋のシンプルさとわかりやすさがいいなと思った。次何が起きるかわからないサスペンスというより、ちゃんと想定通りにうまくいくかのサスペンスがあって、その後に何が起きるかわからない展開にもつれ込むっていう。あと、個人的にカットの多いアクションで、かつIMAXのデカい画面だと何が起きてるか掴みづらく、この映画はシンプルかつそれが何回も練習として繰り返されるし、なんなら何回もミッションで辿る経路を画面で見せてくれるからわかりやすくて良かった。

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